MOE絵本ベスト30 2006年 私の好きな今年の絵本
やなせたかし 漫画家 『いつまでも、鰐』 定評ある名作で、現在まで出版された本も全部持っているが、今回の編集はまたひと味ちがっている。文章が右ページにみじかくあって、左ページが全部絵という読みやすいタイプ。やはり名作は何度見てもいい。絵もすごい。
YOUの絵本でハッピータイム
今回は秋の夜長に泣ける[絵本]ですわ。『いつまでも、鰐』。これねぇ、なんか深くてヤバイですね。久しぶりに心が動かされた感じです。これがね、しかし人間でも、虫でもね、こういうことなんですよ、繰り返してね、愛と生きるをね、繰り返すとね、同じことしてゆくし、してきたわけです。 鰐ね、飼ってたことあって、だから人より鰐って言われると、それだけでも感慨深いのもあるけれど。彼らの生き方、やり方ね。 読んでたら、いつの間にかどんどん自分と鰐が入れ替わってゆくような気になって。せつない。これけっこう今年ベスト5に入っちゃう感じ。 『いつまでも、鰐』 元はフランスの作家レオポルド・ショヴォーが1923年に発表した作品。愛するものを次々食べていく年老いた鰐の話。 ショッキングな内容ではあるが、妖しい魅力に取りつかれてしまう。
絵本も図鑑も大人用は深い味わい
『愉快な鰐がまたもどってきた。 ……ながらく幻の本だった。 ……この度の三度目[の翻訳]には、楽しい工夫がこらしてある。作者自身が構成した本のつくりを取り入れた。 かつての無声映画には、映像のあいだに短い字幕がはさまっていたが、まずはそんなかたちで白黒のあざやかな画面がたのしめる。残像をのこしながら、つづく物語に入っていく。 ……鰐は……波瀾万丈、たしかに、いつまでも鰐であって、……悠々と生きつづける。フランス文士のユーモアは、どこまでも底が深いのだ。』
p101 一部抜粋
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