ヘンリー・ミラーが、その自然の美しさに魅了され、15年以上のあいだ居を構えたアメリカ西海岸のビッグ・サーでの生活を綴る。 風光明媚な土地、ビッグ・サーをミラーはアメリカの消費社会から隔絶したユートピアとして発見し、そこに生きる人々や自らの、いきいきとした暮らしぶりをユーモアたっぷりに描く。 都市の混沌のただ中を生き、『北回帰線』などを世に送り出したミラーが、ようやく見いだした楽園ビッグ・サー とは、どのような場所だったのか? ジャック・ケルアックらが訪れ、ビート・ジェネレーションにも継承された、ビッグ・サーの自由なスピリットとは? ヘンリー・ミラー流の楽園論とも言える本書は、現代を生きる人々のための示唆に富んだ一冊である。
ヘンリー・ミラー(1891-1980)
1891年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。大学中退後、国内を放浪。1930年に渡欧、パリでアナイス・ニンらと交流を深めつつ、精力的な執筆活動をおこなう。1934年に『北回帰線』をパリで出版。その大胆な性描写ゆえにアメリカで発禁処分となった。1940年代にアメリカに戻り、カリフォルニアのビッグ・サーに居を構えた。自然とともに暮らしながら現代文明を批判する作品を生み出し、その精神はビート・ジェネレーションやヒッピー・カルチャーに継承されている。1980年没。