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書名

映画ジャンル論 ハリウッド映画史の多様なる芸術主義

著者
加藤幹郎=著 
定価
3,300円+税
判型・造本
四六判、496頁
ISBN
978-4-89257-117-6

革新的ハリウッド映画論!

修正主義に至る西部劇の変容史、スワッシュバックラー映画の政治的保守性、男性映画としてのメロドラマ…… ジャンルから繙く、ハリウッド映画の構造と歴史

 

映画ジャンル研究の名著『映画ジャンル論 ハリウッド的快楽のスタイル』に、一三〇ページ加筆、全面改訂

 

目次

序 ジャンルの映画あるいは映画のジャンル

第1章 西部劇映画 荒野と文明の緩衝地帯

第2章 道化喜劇映画 災厄を克服する超人たち

第3章 スワッシュバックラー映画 荒唐無稽な政治アクション

第4章 ミュージカル映画 地上の楽園

第5章 ファミリー・メロドラマ映画 理想が現実を凌駕するとき

第6章 ギャング映画 アメリカン・ドリームの隘路

第7章 スクリューボール・コメディ映画 常軌を逸したすばらしい女性たち

第8章 恐怖映画とポルノグラフィ おぞましさのスペクタクル

第9章 ヴェトナム戦争映画 現代史と映画史の課題

第10章 フィルム・ノワール 都会の憂鬱

 

「ジャンル映画がハリウッドの巨大映画産業の中枢をしめる以上、それは社会の広範な領域に多大な影響をあたえるイデオロギー装置ともなる。……ハリウッドのジャンル映画は、その生産=流通=消費のシステムのなかで、高度に社会的な装置となる。してみれば、映画を一本の閉じられた作品として享受する従来の審美的、作家主義的アプローチは、もはやハリウッド映画を論ずるうえでなんの有効性ももちえないことになる。」(本書序章より)

 

第1章では、二十世紀末のときならぬ西部劇ルネサンスから修正主義西部劇の歴史を遡航する。第2章では、道化喜劇映画を対象とし、チャップリン、 キートン、ロイド、ラングドンという四人のスーパー・クラウンを論じる。第3章で は、荒唐無稽な保守的アクション映画でありながら、西部劇同様、 高度に政治的な傾向をしめすスワッシュバックラー映画(剣戟映画)について論じる。第4章は、ミュージカル映画の便利な三つの分類法や、バロックな振付師バズビー・バークリー、驚異のプロデューサー、アーサー・フリードを紹介する。第5章で論じられるのはファミリー・メロドラマである。このジャンルは通常、 「女性映画」とみなされているが、本章では、女性映画作家やゲイ映画作家による「男性映画」が議論の中心となる。第6章はギャング映画を扱い、「なぜギャングは映画の幕切れで死ななければならないのか」という古典的な問いをめぐって、ギャング映画とヘイズ・コード(プロダクション・コード[映画製作倫理規定])の関係などを論じる。第7章は、男性が女性に手ひどい仕打ちを受けるスクリューボール・コメディ映画を対象とする。第8章は、そのクライマックスが酷似する二大身体ジャンルである、恐怖映画とポルノグラフィについての章である。第9章では、一九六〇―七〇年代に古典期からの脱皮をはかり、 暗中模索の一九八〇年代にマニエリスム期をむかえたハリウッド映画が、同時代の難題たるヴェトナム戦争をどのように表象しえたのかを探る。第10章は、世界にたいする底無しの不信の念から出発するフィルム・ノワールについて論じる。

 

デザイン 黒洲零

(2016年3月30日発売)

著者詳細

加藤幹郎

1957年、長崎市生まれ。1977年、筑波大学比較文化学類入学。1986年、筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得退学。1987 年、京都大学教養部助教授。フルブライト奨学金によって1990-92年および2002-03年に、カリフォルニア大学バークリー校、同ロサン ジェルス校、ニューヨーク大学、ハワイ大学マノア校客員研究員。1999年、ミシガン大学客員教授。2006年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授(京都大学博士)。 2015年、早期退職ゆえに京都大学名誉教授。単著に『映画のメロドラマ的想像力』(フィルムアート社、1988)、『鏡の迷路 映画分類学序説』(みすず書房、1993)、『映画ジャンル論』(平凡社、1996)、『映画 視線のポリティクス』(筑摩書房、1996)、『映画とは何か』(みすず 書房、2001、吉田秀和賞)、『映画の領分 映像と音響のポイエーシス』(フィルムアート社、2002)、『「ブレードランナー」論序説 映画学特別講義』(筑摩書房、2004)、『映画の論理 新しい映画史のために』(みすず書房、2005)、『ヒッチコック「裏窓」 ミステリの映画学』(みすず書房、2005)、『映画館と観客の文化史』(中公新書、2006)、『表象と批評 映画・アニメーション・漫画』(岩波書店、 2010)、『日本映画論1933-2007 テクストとコンテクスト』(岩波書店、2011)、『列車映画史特別講義 芸術の条件』(岩波書店、2012)、『荒木飛呂彦論 マンガ・アート入門』(ちくま新書、2014)、増補改訂版『映画とは何か 映画学講義』(文遊社、2015)など。監修書に『映画学叢書』(ミネルヴァ書房、 2010-2015)、第1巻~6巻など。訳書に『知りすぎた女たち ヒッチコック映画とフェミニズム』(青土社、1992)、『わたしは邪魔された ニコラス・レイ映画講義録』(みすず書房、2001)など。編著に『映画学的想像力 シネマ・スタディーズの冒険』(人文書院、 2006)、『アニメーションの映画学』(臨川書店、2009)など。

書評一覧

『キネマ旬報』(6月上旬号)(評者:南波克行氏)、『週刊読書人』(6月10日号)(評者:伊藤弘了氏)、北海道新聞に書評掲載されました。