「わたしが手に入れそこなった何かを彼はもっているーー」
彼とすれちがう人々、彼を愛する人々の視線と
イメージの断片が織りなす、青年ジェイコブの生の時空間
ウルフがモダニズム文学に歩を進めた長篇重要作
「こうして断片的に提出されたおのおのの情景を『編集』したり解釈したりするのは、作者であると同時に、読者ーー読者の印象にやきつけられたものの回想や連想をとおしてであり、われわれは、この作品のあちこちにちりばめられたイメージという鍵を見つけて、ジェイコブの部屋の扉を開き、中心へ入って行くよう求められているのだ。その意味で、これは読者が作品世界の再現(リプロダクション)に参加することを求める度合の大きい作品といえよう。」(本書解説)
装幀 黒洲零
(2021年8月末発売)
ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf 1882-1941)
1882年、ロンドンに生まれる。文芸評論家の父を持ち、知的な環境の中、文学的感性を若い頃からはぐくむ。20代の頃、ブルームズベリー・グループに参加。1915年、最初の長篇小説『船出』を出版する。「意識の流れ」の手法を追求し、『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』などの傑作を生み出す。1941年、神経衰弱のため自死。
[翻訳]出淵敬子 1937年、東京生まれ。1961年、日本女子大学英文学科卒業。1968年、コロンビア大学大学院修士課程修了。1970年、東京大学大学院博士課程満期退了。日本女子大学文学部名誉教授。訳書にヴァージニア・ウルフ『三ギニー 戦争と女性』『女性にとっての職業』(共訳)(以上、みすず書房)『フラッシュ 或る伝記』(白水社)など。