書籍詳細


amazonで購入する
amazon.co.jp
書名

野呂邦暢小説集成3・草のつるぎ

著者
野呂邦暢=著 
定価
3000円+税
判型・造本
四六判、上製、600頁
ISBN
978-4-89257-093-3

匍匐、早駆け、射撃訓練、そして咽をしめつける渇き―

新人自衛隊員たちの日常と肉体の煌きを描画し、芥川賞を受賞した「草のつるぎ」など、「言葉の風景画家」(川村二郎)とも評された作家・野呂邦暢が、真率な視線によって描いた、珠玉の作品群。

未単行本化作品であった、連作小説「水辺の町」を全篇収録。

 

<第三巻>草のつるぎ 2014年4月20日発売

「草のつるぎ」「砦の冬」「水辺の町 仔鼠」(*)「水辺の町 蝉」(*)「水辺の町 落石」(*) 「水辺の町 蛇」(*)「水辺の町 再会」(*)「五色の髭」「八月」「隣人」 「 恋人」「 一滴の夏」

(*は単行本未収録作品)

エッセイ 堀江敏幸(作家)

解説   中野章子

 

「草のつるぎがペンだとしたら、夏の一滴はそれを浸すインクだろう。……空の井戸が井戸として機能するには、その雨を待たなければならないという撞着の真の 意味を、語り手はここで深く感じ取っている。なぜなら、この堂々巡りに似た論 理の破綻こそが書くという行為なのであり、変わった変わらないの状態を残しながら先に進むための唯一の迂路だからである。インクはわずかにペン先を湿らせたあとふたたび干上がらせ、言葉はあたらしい表現の岩場に乗り上げる。」

(堀江敏幸 本書掲載エッセイより)

 

<今後の刊行予定>

第四巻 冬の皇帝

「八月」「回廊の夜」など

第五巻 もうひとつの絵

「猟銃」「失踪者」など

第六巻 諫早菖蒲日記

「落城記」「死人の首」など

第七巻 丘の火

「馬」「青葉書房主人」など

第八巻 資料集

 

各巻解説:中野章子

監修:豊田健次

書容設計 editorial design:羽良多平吉

各巻仕様:四六版、上製角背、496ページ予定


著者・執筆者・監修者

野呂邦暢

1937年、9月20日、長崎市岩川町に生まれる。1945年、諫早市にある母の実家に疎開。8月9日、原爆が長崎市に投下され、原爆の閃光を諫早から目撃する。長崎市立銭座小学校の同級生の多くが被爆により亡くなった。長崎県立諫早高等学校を卒業後、様々な職を経て、19歳で自衛隊に入隊。入隊の年、諫早大水害が発生。翌年の除隊後、諫早に帰郷し、水害で変貌した故郷の町を歩いてまわり、散文や詩をしたためる。 1965年、「或る男の故郷」が第二十一回文學界新人賞佳作に入選。芥川賞候補作に「壁の絵」「白桃」「海辺の広い庭」「鳥たちの河口」が挙がったのち、1974年、自衛隊体験を描いた「草のつるぎ」で受賞。『十一月 水晶』(冬樹社)、『海辺の広い庭』『一滴の夏』『諫早菖蒲日記』『落城記』(文藝春秋)など著作多数。1980年、急逝。享年42。

 

エッセイ 堀江敏幸

1964年、岐阜県多治見市生まれ。作家。早稲田大学第一文学部フランス文学専修 卒、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。 1999年『おぱらばん』で三 島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞を受賞。著書に『雪沼とその周辺』 『河岸忘日抄』『戸惑う窓』など。

 

各巻解説 中野章子

1946年、長崎市生まれ。エッセイスト。著書に『彷徨と回帰 野呂邦暢の文学世界』(西日本新聞社)、共著に『男たちの天地』『女たちの日月』(樹花舎)、共編に『野呂邦暢・長谷川修 往復書簡集』(葦書房)など。

 

監修   豊田健次

1936年東京生まれ。1959年早稲田大学文学部卒業。「文學界・別冊文藝春秋」編集長、「オール讀物」編集長、「文春文庫」部長を歴任。野呂邦暢の才能をいちはやく発見し、デビュー作から編集者として野呂を支え続けた。著書に『それぞれの芥川賞 直木賞』(文藝春秋)『文士のたたずまい』(ランダムハウス講談社)。

 

 

書評一覧