少女奇術師と雪白の翅を持つ鸚鵡(おうむ)
日本と中国に錯綜する運命の糸
解説 黒澤亜里子
装画 松本かつぢ
「この作品が吉屋信子が少女向け冒険ファンタジーに新境地を開こうとした野心作であることは確かだろう。主人公が、みずからの出自を証すために運命の旅に出るモチーフや、主人公が中国人とのハーフというエキゾチックな設定は、当時の伝奇時代小説や南総里見八犬伝などの読本の系譜にも通じるものがある。……『日中の架け橋』として造形された二人の少女の間のギャップは、『白鸚鵡』の不思議な力によって昇華されたのだろうか。鸚鵡は謎と同義である。」(黒澤亜里子 本書解説より)
吉屋信子少女小説集3
(2018年1月30日発売)
吉屋信子
1896年、新潟市生まれ。栃木高等女学校に在学中から少女雑誌に投稿。1916年から『少女画報』に連載された「花物語」が女学生の圧倒的な支持を得、ベストセラーになる。1919年、長篇小説「地の果まで」が大阪朝日新聞の懸賞で一等に当選。1936年から新聞連載された「良人の貞操」が好評を博す。少女小説、純文学、歴史小説、随筆と幅広く執筆活動をおこなう。1952年「鬼火」で女流文学賞、1967年に菊池寛賞を受賞。『わすれなぐさ』『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』など著書多数。1973年、逝去。
装画 松本かつぢ
1904年、神戸市生まれ。エキゾティックで繊細な少女画を描き、『少女の世界』『少女の友』で少女達の人気を得る。1938年、『くるくるクルミちゃん』を連載開始。クルミちゃんは愛すべきキャラクターとして定着し、次々とグッズ化され 、昭和のキャラクターグッズの元祖となった。1986年、逝去。