亡命ロシア人プニン教授のアメリカでの生活を、ユーモア溢れる軽妙なタッチで、ときにアイロニカルな悲哀をおりまぜ描いた長編小説。
1953年から1955年にかけて『New Yorker』に掲載されたプニン教授を主人公にした小説をまとめ、書き下ろしの章を加えて1957年に刊行された。
書容設計 羽良多平吉
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読むたびに内容が変わるこの本を、読み終えることはできるのだろうか。
プニン的なるものの力を、わたしたちはつい見逃す。はっきりと指さすことはできず、注視すると消えてしまう。書けないはずのものを明瞭に描くナボコフは、だからたしかに魔術師なのだ。もしかしてこの小説の本文は、プニンというひとつの単語なのかも知れない。 円城塔
ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)
1899年、サンクト・ペテルブルクの貴族の家に生まれる。ロシア革命後、一家で祖国を離れねばならなくなり、1919年、ロンドンに辿り着いた。ケンブリッジ大学で学んだのち、ベルリンで本格的な作家活動を開始するが、ナチス・ドイツから逃れるため1940年、妻子をともなってアメリカに移住。1955年『ロリータ』を発刊。精緻な仕掛けに満ちた小説を書く、多言語の亡命作家として知られるようになる。晩年はスイスのモントルーで暮らす。1977年没。