十九世紀末から戦争の時代にかけて、とある英国中流家庭の人々の生活を、半世紀という長い歳月にわたって悠然と描いた、晩年の重要作。
「……自我への沈潜から「外」への志向を、ウルフは『歳月』において実験したのであり、その根底には『ジェイコブの部屋』より『波』に至る孤独と絶望を凝視するウルフ自身のヴィジョンの衝迫があったのです。ヴィジョンの命ずるままに進めば、彼女の運命はもっと早くやって来たかも知れません。『歳月』、それに続く最後の作品『幕間』はウルフがみせた最後の自己のヴィジョンへの抵抗挑戦であったと言えましょう。」(野島秀勝 本書解説より)
解説 野島秀勝(文芸評論、英文学)
書容設計 羽良多平吉
(2013年11月28日発売)
ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf 1882-1941)
1882年、ロンドンに生まれる。文芸評論家の父を持ち、知的な環境の中、文学的感性を若い頃からはぐくむ。20代の頃、ブルームズベリー・グループに参加。1915年、最初の長篇小説『船出』を出版する。「意識の流れ」の手法を追求し、『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』などの傑作を生み出す。1941年、神経衰弱のため自殺。
[翻訳]大澤實 1916年、埼玉県生まれ。早稲田大学文学部教授。ヴァージニア・ウルフ研究の専門家として知られる。訳書に『灯台へ』(1949年、雄鶏社)、『波』(1953年、河出書房)などがある。