「僕は魂を持った人々の住む国に行ってみたい!」
最後の楽園、バリに魅せられた伝説の画家、W・シュピースの数奇な生涯を追った初の本格的バイオグラフィー!
バリ、夢の景色 ヴァルター・シュピース伝
坂野徳隆著
仕様:A5判 / 上製本 / 488頁 (口絵32頁)/ 図版約200点収録 /
本体価格5800円 (税別)
日本図書館協会選定図書
目次
収録図版の一部を紹介します(全11枚)
- 現代バリ芸術の礎を築き、バリ島のダ・ヴィンチと称された異色のドイツ人アーティスト、ヴァルター・シュピースは、画家であると同時に、写真家、音楽家、舞踏家などとしても活躍し、さらには今日バリを訪れる人々を魅了してやまないケチャ・ダンスや呪術劇チャロナランの創作にも深く関わるといった類い希な才能の持ち主だった。画家ココシュカや映画監督ムルナウ、喜劇王チャップリンなどにも愛されたシュピース.... 日本軍の爆撃によって46年の生涯を終えた彼が、神々の島に見た「夢の景色」とは?
「伝説」の画家の知られざる功績と人物像に迫る、初の本格的バイオグラフィー!
- 著者:坂野徳隆(さかの・なるたか)
1962年、東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業後、ジャパンタイムズ報道部記者などを経て、フリーランスライター、作家に。著書に、ミステリー小説『シャンペン・ファイト』(双葉社)、『世紀末の群れ』(実業之日本社)などがある。
- 夢の景色 目次
■プロローグ 夢の景色に没したバリの伝説
■第1章 サウルの月
----生誕から抑留、戦後ドイツ帰還までの二十三年
間(一八九五年 〜 一九一八年)
母の人形として生まれた「少女」
豪勢な少年時代の暮らしと崩壊の序曲
ダーチャで育んだ自然科学への興味
ドイツ文化とシュピース兄弟
軍用病院のアイドルたち
人生を変えたウラル体験
ルソー絵画との衝撃的な出会い
■第2章 籠のなかのクロウタドリ
----ヘレラウ時代からヨーロッパ脱出までの五年間
(一九一八年 〜 一九二三年)
舞踏家シュピース
呪われた正確さと画壇デビュー
安定した生活との「別れ(アブシード)」
激動の二〇年代(ローリング・トゥエンティーズ)……ム
ルナウとの出会い
グリューネヴァルトのアトリエ
芸術映画の防波堤
初めての個展
魔術的リアリズムと南洋のマジック
ロシア水夫に化けた渡航プラン
プラシチァーイチェ(さようなら)、マーマ!
■第3章 クラトンの宮廷楽長
----ヨーロッパ脱出からジョグジャカルタを出るま
での四年間(一九二三年 〜 一九二七年)
ハンブルク号からの逃亡
マイ・サラダオイル・ピリオド
夢の国ジョグジャカルタ務め
白壁の向こうへの招待
自問する宮廷楽長
ピアノが奏でたガムラン
『帰宅するジャワ人たち』と、原点へ戻ろうとするシュ
ピース
人生を変えた休暇
バリ、箱庭の楽園へ
■第4章 チャンプアンの新居
----バリ島移住開始から絵画転換期までの六年間
(一九二七年 〜 一九三二年)
農家に住む旦那
二人の「弟子」とバリ絵画
ふたつの流れが交わる地
教科書挿絵のアルバイト
呪術の世界
ムルナウ直伝、ファインダーの魔術師
考古学に魅せられたシュピース
新居の完成とゲストたち
孵化しはじめたケチャ・ダンス
悪霊の島
コンラッドの不思議な最期
■断章 彼らの夢の景色
----熱帯幻想絵画はいかにして創られたか?
運命を予言する絵
夢と現実をないまぜにした景色
影を共有した二人
同性愛者たちの夢の景色
孤独なムルナウの足跡と『夢の景色』の行方
ムルナウの失楽園
死してノスフェラトゥとなったムルナウ
■第5章 風景とその子供たち
----バリ・ルネッサンス期から投獄までの七年間
(一九三二年 〜 一九三九年)
チャーリーの鹿狩り
盛夏のゲスト
植民地政府から頼りにされたアイデアマン
芸術家集団ピタマハ
イッサーの隠れ家
母の誕生日のパラダイス・ロスト
牛の影によって再び結晶化したヴァケーション
視覚芸術と音楽の融合/『風景とその子供たち』
苦しみの自画像/『スケルツォ』
■第6章 終わりのない誕生パーティー
----最後の楽園での時間から抑留、死までの四年間
(一九三九年 〜 一九四二年)
起き上がりこぼし
少年時代に戻った最後のバリの時間
ナチ収容所から出した葉書
遺作の謎
運命の航海
■エピローグ 夢の後
墓さえないバリの恩人
兄弟たちの戦後
バリ人の「夢の色」を深めたシュピース
バリ島の光陰に生き続けるシュピース
注記
ヴァルター・シュピース年譜
ヴァルター・シュピース作品一覧
参考文献