「プロレタリア文学の巨星による哀切な自伝小説三部作!
書くことで、虐げられた者の一人称『あたし』の尊厳と輝きが、甦る。
娼婦が作家になったことだけが『事件』なのではない」工藤庸子(フランス文学)
窮乏のなかで、 少女は生き抜いた――
オランダ出身の女性フランス語作家が描く、驚愕の自伝的小説。
ゴンクール賞候補となった表題作を含め、一世紀を経て、三部作すべてがついに本邦初訳!
『飢えと窮乏の日々』によせて、工藤庸子氏にご寄稿をいただきました。
デザイン 黒洲零
(2015年10月末発売)
ネール・ドフ(Neel Doff 1858-1942)
オランダ出身の女性フランス語作家。アムステルダムで少女時代、類を見ない極貧生活を送り、12歳ごろから働きはじめる。追い詰められた時には娼婦にまでなった。50代に自伝的三部作、『飢えと窮乏の日々』(1911年)、『ケーチェ』(1919年)、『使い走りのケーチェ』(1921年)を著した。すべて彼女の体験に基づく凄まじいレアリスムの作品だが、筆致は淡々としている。この《飢えのシンフォニー》は貧困という不正義を謙虚に告発している。
翻訳 田中良知
1947年、盛岡市生まれ。東京都立大学大学院修士課程修了。19・20世紀フランス文学専攻。訳書に、アルベール・コスリー『老教授ゴハルの犯罪』(水声社、2008年)、パナイト・イストラティ『キラ キラリナ』『アンゲル叔父』『コディン』(未知谷、2009−10年)、シャルル=フェルディナン・ラミュ『山の大いなる怒り』(彩流社、2014年)など。