「それを見る者の官能においてではなく、それに参加する者の官能によってナチ スの政治運動の自己宣伝的拡大を読み解くのが草森流だと言えるだろう。だが本巻において草森は、そうした空虚な政治宣伝がうまく拡大していったメカニズムだけでなく、そうした宣伝の自己拡大の機能が失調して働かなくなる瞬間を描き出そうとしている。……『絶対の宣伝』は必ずしも絶対ではなかった」長谷正人(本書解説より)
「ハーケンクロイツには、官能をゆすぶるなにものかがある」
人々を恍惚とさせるヒトラーの演説、行進のページェント化、葬儀のショウ化……大衆を忘我に導く、ナチスの煽動のメカニズムを明らかにする。
長谷正人氏(映像文化論)による書き下ろし解説「空虚な自己宣伝としての政治運動」を収録。
<目次>
制服のデザイン/シンボル1 ハーケンクロイツ(鉤十字)/シンボル2 勲章 /ヒットラーの演説/スローガン/デマ1 流言蜚語の波 /デマ2 ヒットラー暗殺事件の場合 /選挙運動/行進/新聞統制/焚書/血と名誉/葬儀/負け戦さの煽動
万巻の書を博捜し、多岐にわたるジャンルを自在に越境した著者による、ナチス研究『絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ』シリーズ
1 宣伝的人間の研究 ゲッベルス 解説 片山杜秀 2015年7月発売
2 宣伝的人間の研究 ヒットラー 解説 池内紀 2015年12月発売
4 文化の利用 近刊
装幀 加藤賢策(LABORATORIES)
(2016年5月13日発売)
草森紳一
1938年、北海道生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒。編集者を経て文筆家に。 1973年、『江戸のデザイン』(駸々堂出版)で毎日出版文化賞受賞。ライフ ワークである李賀、副島種臣から、デザイン、絵画、写真、広告、建築、マンガまで、さまざまな分野を跨ぎ、先駆的な著作を著した。 2008年3月歿。著書に『ナンセンスの練習』(晶文社)、『見立て狂い』(フィルムアート社)、『荷風の永代橋』(青土社)、『随筆 本が崩れる』(文春新書)、『中国文化大 革命の大宣伝 上下巻』(芸術新聞社)、『李賀 垂翅の客』(芸術新聞社)など多数。